DNB の CD−ROM 版
(CD−R0M 版辞書愛好者のために)

栂 正行



DNB とはディクショナリー(D)・オヴ・ナショナル(N)バイオグラフィー(B)のことです。中京大学研究棟1階の資料室に全30巻がそろっています。英国人の伝記を束ねた本ですから『オックスフォード英語辞典』より使って面白いという人もいるかもしれません。

DNBの本文の検索方法としては「人・インデックス」というボックスと「語」というボックスがあります。「人・インデックス」のほうには人名を入れるとただちにその人物の項目にとんでいけます。便利なのは「語」です。ここに横文字で「ディケンズ」と入れ、検索を開始します。すると「ディケンズ」という語の出てくる項目が、「ディケンズ」という語の出てくる頻度順に並びます。一番上はもちろん「ディケンズ」ですが、その次には順次「ディケンズ」と交友のあった人物が並びます。「シェイクスピア」でこれをやってみると、影響の手がかりも得られます。

「語」に入れて効果的なのは「ディケンズ」などの人名に限りません。「冒険」という言葉を入れてみます。すると本文中に「冒険」という言葉の出てくる人物がその頻度順に並びます。こうのようにして「語」のところに「ユートピア」、「風景」、「川」、「記憶」、「想像力」、「楽園」、「鳥」、「森」、「湖」などと入れてみて楽しむのも手です。ただしこういうことをしていると、パソコンをめぐるあらゆる作業同様、それ自体が目的化し、貴重な時間をつぶしてしまうことにもなりかねませんから、意志の強さが必要です。パソコンは無限、しかし人間はどんなに勉強したいと思っても有限です。それをパソコンとまともにつき合ったのでは、こちらの寿命を縮めます。そもそもCD-ROM版の有り難さは、昔ならば半日図書館で潰してしまう時間のかなりの時間がものを考えたり、遊んだり、創造的な仕事につかえるようになったという点です。

ということで拙文をものしている私もこのDNBの一番おもしろい部分をお伝えしたのですから、こんなこともできます、あんなこともできますと、無駄に紙面をお借りするのではなく、あとは同様に楽しめかつ役にたつ電子辞書類のいくつかを紹介してお暇することにします。

英国を楽しむためには『世界の車窓から』(富士通)、『シェイクスピア・シリーズ』、『大英帝国の興亡』、『産業革命』、『ヴィクトリア女王時代』、『帝国主義』、『ヨーロッパ文学史』、『イギリス文学史』、『チョーサー:時代と生涯と作品』、『シェイクスピアのロンドン』、『シェイクスピア劇場』、『シェイクスピア:時代と生涯と作品』、『ワーズワース:時代と生涯と作品』、『ディケンズ:時代と生涯と作品』、『ハーディ:時代と生涯と作品』、『サイエンスフィクションと幻想小説』(以上すべてジェムコより発売)などが気になる CD−ROM です。

英語を読むためにまず『オックフォード英語辞典』(すでに会報で紹介しました)。それから『ランダムハウス英語辞典』、『ウェブスター英語辞典』、『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』、『リーダーズ+プラス』(研究社、英語を書く人にも便利)、『ロングマンインタラクティヴ英英辞典』(おまけの英会話教材がマルティメディア教材への入門になります)、『オックスフォード・コンペンディアム』(オックスフォードの類語辞書がついています)、『オックスフォード・レファレンス・シェルフ』(百科事典がついています)、『タイム・アルマナック』(『タイム』の記事5年分を自由自在に検索できます)、『電子図書館』(文学作品の本文)などが一度は試してみる価値のあるもの。

調査の好きな人には『キネマ旬報シネマデータベース』、『辞書事典オールガイド』、『12カ国語電子辞書』(何語かわからぬ時に便利です)、『エンカルタ』(マイクロソフト、面白くて最初はかなりはまります。レポートの作成に便利です。お金はないけど遠くへ行きたいという時は、いろいろな遺跡の映像を楽しみましょう)、『アトラス』(同、地図を動かせるところが面白いのですが、拡大に限界があります)、『ブックシェルフ』(同、この手のものではとても役に立ちます)、『西洋文芸人名録』、『8万人西洋人よみ方綴り方辞典』(以上三修社)、『CD ブックページ88−97累積総索引』(ブックページ刊行会、これを検索し始めるとおもしろくてためになり気がついてみると一時間などということがしばしばです。調べがついたらすぐ閉じる意志の強さが必要)、『新潮文庫百冊』(新潮社、瀬石の用いた単語の検索など、利用法は利用者次第です)、『CD-ROM 版岩波文庫解説総目録1927−1996』(岩波書店、これも検索していると昔あれを読んだとか、時間が出来たらこれを読もうとか、思いは千々に乱れます)、『明治の文豪』(新潮社)、『CD-ROM 版新潮美術事典』(新潮社)、『聖書』(日本聖書刊行会)、『聖書』(日本聖書協会)、『マイペディア』(平凡社、『エンカルタ』とともに読んで面白い事典です)、『コンサイス・オックスフォード辞典』『広辞苑』(岩波書店)、『ブリタニカ大百科事典』(ブリタニカ)、『世界大百科事典』(平凡社、中京大学センタービル3階の図書館にあります)、『日本大百朴事典』(小学館、何か読んでいる時に横においておくと便利です)、『CD-ROM -翻訳図書目録45/92芸術・文学編』(日外アソシエ一ツ、翻訳で読める本が一瞬にして検索できます)と、これまたきりがありません。

インターネットで検索したほうが便利という声も聞こえます。たしかにそういうこともあるかと思いますが、WWW の世界というのはいわば海です。よい情報もあれば、よくない情報もあります。その点、元がある程度保証されている CD-ROM は、いけすのように範囲は限られていても、無駄に時間をつぶしてしまう可能性が少ないのです。

よいCD-ROM、こんな CD-ROM を知っているという方は、是非とも教えて下さい。

なお、CD-ROM 版の辞書の感動の世界にこれから入ろうという学生諸君に筒井脩先生の『英語学習のための CD-ROM 入門』(大阪教育図書、1996年10月15日)という本を紹介します。副題 --辞書・聖書・英米文学-- を聞きますと、この本のうるおいを感じ取ることができます。

(教養部教授)

□最近日外アソシエーツより『世界 CD-DOM 総覧1998』がでました。 あわせてご参照しださい。
※正月にゲームソフトで山手線の運転をしましたが、正しい位置に停車させるのは本当にたいへんでした。この点、電子辞書ははるかにはやく習熟することができます。

教養部教授


The Chukyo University Society of English Language and Literature
Last modified: Thu Apr 30, 1998

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