『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』を読む

木下 恭子



マークス寿子氏の著作物は大半読んでいる。自分の専攻している研究の分野と違う本は、ワクワクしながら読むことができる。ここでは、1997年度のベストセラーとなった『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』を取りあげて、私の思ったことなどについて少し述べてみたい。

マークス氏は現在八千代国際大学で教鞭をとっているため、日本とイギリス半々の生活をしている。そのため、イギリスからながめた日本が筆者の鋭いまなざしで語られている。「日本」とは何か、「日本人」とは何かという問いかけを持ち続ける姿勢から、日本のおかしな点が指摘されている。第5章の「品数だけは豊富一味音痴を生む冷凍食品」は、海外滞在経験者ならではの鋭い指摘だ。冷凍食品は仕事が忙しい人々には便利だが、時間的には余裕のある主婦が普通に利用しているのに筆者は驚いている。品数を多く食卓に載せたいために、安易に冷凍食品を使用することは子どもを味音痴にしてしまうという。いくら色や形は同じでも、鮮度の面から考えて自ら材料を洗ったり、切ったり、煮たり、味つけした料理の方がおいしいと思う。子どものためにも最初から作った料理を食べさせ、料理をつくる楽しみを大切にしたいものだ。

筆者は長年英語圏で暮らしているため、氏の文章は論理的でストレートであり、読んでいて心地良い。私は海外在住の日本人の日本を見る視点には、意外な日本の見方などが書かれていて、大変興味がある。その中でも、マークス氏の著作は説得力があり、読者を納得させるだけの完成度が高い著作に仕上がっている。

読者カードを出したところ、私の感想の抜粋が新聞のこの本の宣伝欄に採用され、謝礼を送っていただくといううれしいおまけもあった。マークス氏の著作にはこれからも注目していきたいと思う。

(大学院学生)


The Chukyo University Society of English Language and Literature
Last modified: Fri Nov 13, 1998

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