ボストン文学散歩

木下 恭子(大学院学生)



昨年の夏、語学研修のためボストンを訪れる機会に恵まれた。以前からヨーロッパの雰囲気漂う、歴史の町ボストンへあこがれを抱き、是非行きたいと思っていた所だ。ボストンでは米文学史上ゆかりの地を訪れることができた。大学での米文学史の授業は、作家名と作品名の暗記を中心とした試験での苦労の方が、授業の内容よりも思い出される。あの頃は作品の舞台となった場所がそのまま保存されているとは思っていなかった。

コンコードへ行き、「ウォールデン 森の生活」を書いたソローで有名なウォールデン池を訪れた。夏だったが緑が濃く涼しい位で、ウォールデン池は池と言うより湖の様に大きく感じた。静かでもの淋しい雰囲気の場所だと想像していたが、池では多数の子供たちが浮き輪で遊んでいて、にぎやかだった。池の周辺が公園になっていて、ソローが生活していた頃の静けさは週末にはないようだ。

次「若草物語」で有名なルイザ・メイ・オルコットの家のを訪れた。私が行った時間はあいにく家の中は閉まっていたが、1日に3回程家の中が公開される。オルコット家の小じんまりとした木造の質素な家は、典型的なアメリカ東部の家だった。家の隣のベンチで昼食をとっていた、旅行者2人の姿が印象的だった。

ハーヴァードには、アメリカで最も人気のあった詩人であるヘンリー・ワズワース・ロングフェローの家がある。彼の家は外観が薄黄色で、木々の緑と外観の色の調和がとれていて美しい。家の中も公開されていて、ガイドが一部屋ごとに詳細を説明してくれた。ロングフェローの書斎は広く、落ち着いた感じだった。ダイニング・ルームは他の部屋と違って、東洋風だった。ロングフェローの子孫が日本や中国から持ってきた陶器が多く展示してあった。

魔女狩りの町として有名なセーラムへ電車で行った。ここにはホーソンの七破風の家があり、部屋ごとにガイドが説明をしてくれる。各部屋は小じんまりとしていた。七破風の家は海に面していて、庭には色とりどりの花が咲いていて美しかった。

ボストンには見所が多くあるが、私にとって文学史上有名な場所を訪問できたことは、大きな収穫だった。米文学史に関する本を読むだけでは得られない情報が、実際にその場所を訪れることで得られ、米文学の魅力に触れることができた。


The Chukyo University Society of English Language and Literature
Last modified: Mon Nov 16, 1998

Previous