セミナーに学んだこと

前田 洋平



私は、昨年の7月19日〜8月17日に行われた、中京大学アメリカン・セミナーに参 加した。英文学会の境先生のご指導のもと、五月に入ってから出発するまで週一 回の研修に参加した。時には、参加者同士の親善を深めるため、また学習会の充 実を図るための、合宿も開いた。この研修を利用して、我々参加者は、アメリカ の社会、歴史、産業等の必要最低限の知識を学んだ。そして参加者各自について より深く知り合い、簡単な英会話に慣れるために、二人一組で話し合った後、相 手の紹介を全員の前で行う、「他己紹介大会」等を行った。また、アメリカ人か ら日本について聞かれた時、応答できるよう、英語を用いて日本の文化を勉強し 合った。我々には統一テーマとも言えるテーマソングがあった。一つの通年のテー マソング"My Revolution"、もう一つは今年のセミナーのテーマソン グの"If We Hold On Together"である。全員でこの歌の練習をし、機 会がある度歌ううちに、団結力は深まっていった。これらのこtから、日本から 見たアメリカ、団結することの大切さ、集団の中での自分のおける立場などを知 り得た。

このセミナーに参加することになったきっかけは友人に誘われたことからである。 その友人は今回参加しなかったが、彼のおかげで心を外に開けることができたの である。私は高校2年の時、アメリカに留学中の同級生が現地で射殺された。以 前から留学してみたいと思う気持ちと裏腹に、治安がよくないことへの不安があっ た。この事件の後、不安は広がり、外へ目をむけることに対して、自分はかなり 臆病になっていた。彼に合わなかったら今回外に目を向けることはできなかった だろうからである。その後、昨年のセミナーの機関紙の体験談を読むうちに、参 加するという決断をしたのだ。

7月19日に大阪を出発し、サンフランシスコを経由し、シカゴの空港に到着した。 そこから車で1時間30分、我々はイリノイ州の小さな町、カンカキーに着いた。1 週間ホームステイでお世話になる家族と、研修先のオリベット・ナザレン大学で 対面した時の嬉しさと、家族からの開放感は今も忘れていない。それから1週間、 私は日本にいては経験できないであろうことをいくつも経験した。すべてが新鮮 に思えた私は、疲れなどみじんにも感じなかった。シカゴの博物館見学、教会の 日曜礼拝、牧場、裁判所見学、大学での音楽、語学研修・・・。後で考えると過 密なスケジュールに思えたが、本当に疲れなど感じなかった。夜は、私ともう1 人の仲間と家族の6人で、ゲームをしたり、それぞれの国について話たりして楽 しんだ。家族は私たちに本当に親切にしてくれた。7月25日のフェアウェルパー ティーの時は、感謝の気持ちを込めて、折り鶴の首飾りを贈った。その時、我々 の涙は、止まらなかった。次の日出発する時も、別れが惜しくてならなかった。 人の本当の優しさとはこういうものなのかと少し感じ取ることができたと思う。

7月28日、空路ボストンに向けて出発。昼すぎ寮に到着。といっても我々男子6人 と大学職員の4人の方は事情で一戸建ての民家で今後生活することになる。寮、 マサチュウーセッツ州立大学ボストン校(後、UMASSと表記する)での歓迎レセ プション、オリエンテーション他がり、31日にはクラス分けテストを受けた。そ の結果、午前は Stephanie 先生、午後は Gray 先生が担任の先生となった。我々の クラスの午前のクラスはかなり活発で、毎日書いてくるjournalという日記のよ うなものの読み合いをしたり(時々ユーモアを交えて書いてきて、笑いをとった 者もいた)、少人数に分かれて、老人福祉、妊娠中絶、コメの自由化等について 話し合った後に発表したり、時には新聞の見合い広告のようなもの(Personal Ads)を参考に、自分で同様のものを作ってみたりと、かなり密度の濃い英語の 授業を受けてきた。午後は、大抵外出し、ボストン美術館を見学したり、コンサー トや野球観戦をしたり、Mother Goose ゆかりの地へ行ったりと、課外授業のよう なことをしていた。とても楽しく、貴重な体験だった。英語と接して親しむこと が目的の我々にとって、ためにならないものは何もなかった。そんな数々の思い 出を胸に秘め、8月15日のフェアウェルパーティは、それらをスキットにしてク ラスの仲間と演じた。すべてが終わった後、私はまた泣いてしまった。楽しく、 充実した1ヶ月は、あまりにも早く過ぎ去ってしまった。

翌日、帰りの飛行機の中、帰ってきてから、セミナーを通じて得られたもので、 何が一番大切かを考えた。それは、人の本当の優しさに触れることができたこと、 セミナーの仲間、アメリカ人の友達との運命的な出会いの2つだったと思った。

このような機会を与えてくれた両親、お世話になった引率の境先生、田村先生を はじめとする教職員の皆さんに、この場を借りてお礼を言いたいと思います。あ りがとうございました。


追記:こんな貴重な体験はなかなかできません。これを読んで、セミナーに少し でも参加してみたくなったら、お金の都合のつき次第、参加してください。十分 元手がとれるほど充実した生活があなたを待っていることでしょう。


The Chukyo University Society of English Language and Literature
Last modified: Fri Jul 3, 1998

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